NAHT--In
The Beta City
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(国内盤 : Secreta
Trades/Disc Union STD-01)
日本が誇るエモ・コア・バンド、NAHTの7年ぶりの新作。
ヴァイオリン奏者のYasukoを加えた2000年リリースの前作『the
spelling of my
solution』から長い期間の沈黙の間にメンバー・チェンジがあり、結局、ヴァイオリンレスの3ピース・バンドに戻った彼ら。日本におけるエモの先駆者だったハズが、その寡作ぶりがたたって(?)作品を出さなくなっているうちに、日本でもエモを演るバンドはすっかり珍しくなくなってしまった。昔のようなサウンドでは周囲に埋没してしまう虞れのあるなか、彼らが提示してきた音とは、昔のNAHTのサウンドのウリであった壮大なスケール感のあるダイナミックなプログレ的エモの要素を控えめにして、(ジャケットからイメージされるような)夜の都会の喧噪を思わせるダーク&グランジィなもの。サウンドからは昔のような突き抜け感は無くなったものの、Seikiの「うた」は以前と同じように真っ直ぐで、聴く者の心に訴えかけてくる。
その長き不在の間にすっかり存在を忘れつつあったけど、こうしてSeikiの相変わらず真っ直ぐな「うた」を堪能することが出来て、素直にうれしい。
R.I.Y.L. : JIMMY
EAT WORLD, FUNERAL FOR A FRIENDS
(2007.9.30)
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中村一義--100
s
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(国内盤 :EMI
TOCT-24841)
中村一義の4th。このアルバムでは「聴き手にメッセージを送ること」よりも「聴き易さ」に重点を置いたのか、どこかで耳にしたことあるようなフレーズ/メロディーをイロイロと織り込み、聴き手の耳に馴染み易い工夫が施されてるような気がする。“Yes”のイントロが、ストロベリー・スウィッチブレイドの“Since
Yesterday”(邦題“ふたりのイエスタデイ”)を思い起こさせるあたりが顕著な例。前作『ERA』ではメッセージが鋭過ぎて、聴いていてツラくなることがあったけど、ヴォーカルよりもサウンド/楽曲じたいに耳がいくんだよなぁ、今回は。メッセンジャーとしての中村一義に『ガツン!』とくる歌詞を期待するファンにとっては、もしかしたらモノ足りないのかもしれないけど、一般音楽ファンにとってはこのほうが聴き易いんじゃないだろうか? ま、一般音楽ファンにとっては、中村一義のカン高いヴォーカルに慣れるほうが先でしょうかねぇ?
R.I.Y.L. :
中村一義(笑)
(2002.11.30)
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KATE
NASH--My Best Friend Is You
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(国内盤 :
ユニバーサル UICP-1116)
元・スウェードのバーナード・バトラーがプロデュースした、ケイト・ナッシュ嬢の2ndアルバム。バーナード自身もギター、ベース、キーボードをプレイしてる。
リリー・アレンが大ブレイクを果たした後にデビューし、「女のコの本音を歌う」という点などが一緒だったこともあり、リリーの二番煎じ的な見方を受けたケイト。都会的なリリーとは異なり、赤毛でどこかドン臭いルックスでそのサウンドも牧歌的でのどかなケイトは(前作のジャケットの印象もあり)『田舎のリリー・アレン』などと蔑まれてた(..っつうか、そう蔑んでたのは、私です...苦笑)。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなどの生ストリングスを導入したり、ウクレレを用いた曲(“Don't
You Want To Share The
Gulit?”)があったり、ケイト自身ギターやドラム、ピアノ、オルガンをプレイしたり...と、このアルバムはデビュー作に比べよりオーガニックで自然なサウンドになった。リリーが2ndでもサンプラー/打ち込み多用のサウンドを推し進めたため、両者のキャラクターの差がよりハッキリし、この2人を比較するひとはもう居なくなるだろう。同じ歌詞を連呼する曲が多いため、楽曲が憶えやすい。また、彼女自身がドラムを叩いてることもあり、リズムが目立つ曲が多いのが特徴か。会話をしてるかのような独特のケイトの唱法は健在だけど、ただ、このモッタリとした歌い方と声質を嫌うひとも多いかも...(苦笑)。
ちなみに、“I Just Love You
More”のリフとシャウトはロック的で、一度聴いたらなかなか耳から離れないと思います。
R.I.Y.L. : Sandi
Thom
(2010.9.29)
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STEVIE
NICKS--Trouble In Shangri-La
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(国内盤 : ワーナー
WPCR-10945)
フリートウッド・マックの女性ヴォーカリストの7年振りのソロ第6作(ベスト盤除く)。前作は商業的に大コケしたし、そのうえ時間も経ってるし...ということなんでしょうか、『援軍』を大量に呼んできました(笑)。収録の半分がシェリル・クロウがプロデュースして演奏にも参加。“Love
Is”にはサラ・マクラクラン、ピエール・マーチャンド、アッシュ・ソード、ブライアン・ミナト...とマクラクラン一家揃い踏み(笑)。さらにはメイシー・グレイもゲスト参加。...とまあ、豪華な『援軍』のお蔭でかなり筋力アップされ、'80年代全盛期のスティーヴィーに近い印象を受けます。“Planet
Of The Unverse”が個人的に大スキ!(笑)
R.I.Y.L. :
Sheryl Crow
(2001.6.30)
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二階堂和美--また
おとしましたよ
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(国内盤: poet
portraits ppr-36cd)
初めて聴いた時は、あまりにも凄い内容にビックリ! 「もしかしたら、アブナいひとの作品集なのかもしれない」と思ったくらいで、どう取り扱えばいいのかしょーじき悩んだ(苦笑)。でも、じっくり聴いていくうちに、すっかり耳に馴染みました(笑)。
基本的には、爽やかなアコースティック・ギター一本に、ちょっと舌足らずな乙女チックなヴォーカルが乗る『弾き語りモノ』なんだけど、歌だけに留まらず、裏声、つぶやき、奇声、絶叫など、あらゆる声による表現方法を駆使し、唯一無二の独特の世界を作りあげてます。アコースティック・ギターによる涼し気な旋律と、雲のうえをフワフワお散歩してるかのような浮遊感も魅力。誉めてるのか貶してんのか分からなくなるけど「頭のまわりは春一面」という表現がピッタリ!(笑)
そんなニカさんのライヴを観る機会があったんだけど...ライヴでもこのまんまでした(苦笑)。
R.I.Y.L. :
比較対象を思い付きません!(苦笑)
(2003.9.30)
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HEATHER
NOVA--Wonderlust (Live)
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(import : V2
WR1013242)
英領バミューダ諸島出身で、ミシカの姉としても知られるヘザー・ノヴァのライヴ盤。島育ち...というか、洋上漂うボートの上で育ったという経歴から解るとおり、海のリズムがすっかり身に着いてるヘザー。どの曲も海と波をイメージさせるものばかり。ふだん凪いでておとなしそうな海も、一旦荒れるとコワイ...。→詳細はこちら。
R.I.Y.L. :
Jewel、Tara Maclean、Sarah
McLachlan、Mishka
(2000.9.12)
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HEATHER
NOVA--Redbird
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(import : Saltwater
ABB210)
1995年のワールドワイド・デビュー・アルバム『オイスター』から数えると5枚目になるヘザー・ノヴァの2年ぶりのアルバム。
それまでの『バミューダ・マーメイド』と呼ばれた神秘的なイメージをかなぐり捨て、大衆ウケを狙ったポップな音像に接近した2001年リリースの3rd『サウス』(バーナード・バトラーとの共演も話題になった)、全編アコースティックな楽曲で占められた地味な2003年リリースの4th『Storm』...と、ここ数作は彼女本来の持ち味から大きく外れた作品が続いたけど、間に出産を挟んでリリースされたこのアルバムではデビュー当時に近いサウンドを披露し、昔彼女が放ってた神秘的なイメージが戻っている。『オイスター』や2nd『サイレン』ではチェロの音色が彼女独自の音世界の構築に大きく寄与してたけど、このアルバムではチェロの代わりに(というワケでもないだろうけど)ヴァイオリンを使用した曲が数曲ある。このアルバムを聴いて「昔に戻った」ような気がするのも、このせいかもしれない(2曲目の“I
Miss The Sky”が一番昔のイメージに近い)。
ちなみに、1曲目の“Welcome”には、ダイドが作曲で参加。10曲目の“Wicked
Game”はクリス・アイザックのカヴァー。3曲目の“Motherland”は、私が一番好きな曲です(笑)。
※昔のヘザーについてはこちら→とこちら→も参照
R.I.Y.L. : Paula
Cole, Natarie Merchant, Sarah McLachlan
(2006.1.31/2.15)
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OASIS--Don't
Believe The Truth
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(国内盤 : ソニー
EICP-515)
いきなりウェットなイントロを持つ“Turn Up The
Sun”(アンディ・ベル作)で始まり、次の曲は「ダッダッダッ」と刻んでいくような軽快なリズムの“Mucky
Fingers”(ノエル兄・作曲)、続くはヴォーカルの耳触りがマイルドな“Lyla”...このオアシスの3年振りの新作には、最初から「今までのオアシスと何かが違う」と思わせるには充分なインパクトを与えられた。ここ2作のオアシスの作品に少なからぬ不満を抱いていたが、その不満を一気に吹き飛ばす『起死回生作』。作品全体に言えるけど、これまでになく英国的な湿り気のあるサウンドになった、と、思う。『U.
K.
ロック』の代表的バンドと言われつつも、あまり英国的な湿り気が無いがゆえにアメリカを始めとしワールドワイドで成功した(と思う)オアシス。「ロックン・ロール・スターになってやるぜ! イェイ!」と歌い、ロックン・ロール・スターに憧れたりする特定の世代の支持を集めてBIGになっていったが、30代になり大金持ちになっていても、前作までは基本的には「ロックン・ロール・スターになってやるぜ! イェイ!」のままだった(笑)。今作、ようやく30代の大金持ちである自分が出したい音を素直に出してる印象がある。年輪に正直というか。それがこのアルバムで聴ける音の『リアルさ』=『説得力』につながってると思う。
ってことで、3rdの『ビィ・ヒア・ナウ』以来久々にオアシスに熱くなれる自分が居ます。個人的には、ノエル兄が歌うノエル兄が歌う曲“Mucky
Fingers”や“The Importance Of Being
Idle”が好きです(笑)。
R.I.Y.L. : U. K.
Rock
(2005.6.30)
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小谷美紗子--Then
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(国内盤 :
ユニバーサル UUCH-1049)
デビュー時から一貫して、みんなが目をそむける『現実』を敢えて聴き手に突き付けるような『厳しいうた』を歌ってきたピアニスト/ヴォーカリスト/ソングライターの小谷美紗子さん。長髪を切ってショート・ヘアになり外見的にもイメチャンを図った今作では、ポップでかつ、澄んだ音像に接近。英詞の曲が増え、『ピアノ版・BONNIE
PINK』とさえ呼べそうなクレヴァーなクールネスが漂っとります。“ハル”では日本の歌謡曲の大御所・筒美京平氏との共作でより大衆化を図る一方、“音”ではイースタン・ユースがバッキング・トラックに参加するなど、話題も豊富なんだけど...よく歌詞を見ながら聴くと、音のカルさに反して、『現実を突き付けるような厳しさ』を持つ詩の存在に気付く....(汗)。彼女の歌声は時には舌足らずで甘く耳に響くけど、一方でいつも芯がしっかりとおった硬さも感じ取れるんだよなぁ...。
R.I.Y.L. :
表面的にはBONNIE PINKっぽくなったけど...(汗)
(2002.6.30)
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THE
OFFSPRING--Splinter
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(国内盤 : ソニー
SICP-500)
2002年の『サマソニ』出演後、ドラマーのロン・ウェルティーの脱退くらいしかめぼしいニュースが無かった(あ、ニュー・アルバムのタイトルを『Chinese
Democracy』にしようとして、ガンズのアクセルの怒りを買った事件があったか...苦笑)オフスプリングの久しぶりのアルバム。
ここ最近のオフスプリングは、“Pretty Fly (For A White
Guy)”や“One Fine
Day”といったノー天気な楽曲ばかりが注目され、カリフォルニアの陽気なおバカ・バンド群と一緒くたにされてしまう傾向があったけど、このアルバムでは、♪アハ〜ンアハ〜ン...が話題になる以前の、1997年の『イクスネイ・オン・ジ・オンブレ』の頃までの硬派なサウンドに戻った印象。ま、中には“The
Worst Hangover Ever”や“Spare Me The
Details”といったノー天気な曲もあるけど、大ヒット作の『スマッシュ』にも“What
Happened To
You?”があったワケだし(苦笑)。『BURRN!』の前田あたりに「ヘタクソ」って酷評されてたドラマーのロンが抜け、代わりにジョシュ・フリーズが叩いてるお蔭で音が締まった印象も。
本来ならばもっと早くこちらで取り上げたかったんだけど、このような遅い掲載になったことをお詫びします(ぺこり)。←って誰に?
R.I.Y.L. : BAD
RELIGION
(2004.4.30)
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岡北有由--ベイスメント・ダイアリー
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(国内盤 : キティ
UMCK-1028)
海外留学経験アリの自作自演女性シンガーのデビュー・アルバム。'91年のオルタナ・エクスプロージョン以降の洋楽からの影響が顕著な音。オープニング・トラックの“ほんとのもの”のイントロのクリアな感触はスマッシング・パンプキンズを思い出したし、ヴォーカル・スタイルはアラニスふうだし、かといって、静かな時にはBonnie
Pinkやミニー・リパートンふうだったり...と、いくつもの引き出し持ってます(笑)。個人的には、容認できないセンスの歌詞(笑)があったり、ウラ声へスムーズに移行できない唱法が聴く度に癇にさわりますが、細かいところには目をツブって、新しい可能性を断固支持します!!!(笑)
R.I.Y.L. :
Alanis Morissette, Bonnie Pink
(2001.7.5)
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鬼束ちひろ--インソムニア
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(国内盤 : 東芝EMI
TOCT-24560)
今、世間で話題沸騰の女性ヴォーカル作品。ルックスからは想像不能のクラシック声楽的とすら言えるような高尚なヴォーカルもの。何の澱みもなくサラサラと流れる川のよう。比較対象がなかなか思い浮かばないんだけど、『ベース殺し』という異名をとるほどギターがパーカッシヴになる前のアーニー・ディフランコの作品(初期の3枚)に通ずる世界があると感じました。
R.I.Y.L. : Ani
Difranco『Ani Difranco』,『Not So
Soft』and『Imperfectly』
(2001.3.31)
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LA OREJA
DE VAN GOGH--El Viaje De Copperpot
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(import : Sony
Discos LAK-84174/2-499572)
『CMJ』で、ベリーみたいな音...と紹介されていた女性ヴォーカルを据えたスペインのポップ・ロック・バンド。ベリーよりもベタな音。LUSHやコクトー・ツインズのように耽美系でもなく、ザ・サンデイズみたいな透明感も無く、ジュリアナみたいな清涼感も無く、クラウドベリー・ジャムのようにソウルフルでもなく、ホールみたいにパンキッシュでもなく、ヘヴンリーのようなインディー・ポップでもなく、レターズ・トゥ・クレオやレッド・ファイヴみたいなパワーポップ系でもなく、勿論ハートなどの王道系でもない(笑)。強いていえば、エコーベリーやスリーパーのようなブリットポップ全盛時の女ヴォーカルものから英国らしさを取ったような音...かな?(笑) 「元気いっぱいのカーディガンズ」っていう形容も有効だと思う(笑)。全曲スペイン語。スペインの歌謡曲と思えば分かりやすい? その分かり易いポップさこそが魅力!!!
R.I.Y.L. :
ECHOBELLY, SLEEPER, THE CARDIGANS
(2001.4.30)
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OTHER STAR
PEOPLE--Diamonds In The Belly Of The Dog
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(国内盤 :
ポリドール POCM-1292)
元・L7のベーシストだったジェニファー・フェンチのニュー・バンド。ジェニファーはヴォーカルとギターを兼務。代わりにジュンコ・イトウなる女性ベーシストが参加している(“Blown
Away”という曲で日本語を喋っているのは彼女だろう)。
L7といえば、女性ハード・コア・パンク・バンドだったが、ここではL7の影を一切排除したポップなロックを演っている。初期のカーズを手がけたロイ・トーマス・ベイカーがプロデューサーのせいか、初期のカーズを思わせる音...ってことは'70年代後期の音???。
『異星人』というバンド名、『犬の腹のなかのダイアモンド』というアルバム・タイトル、日本語の語りが入るところや、今さら『ロイ・トーマス・ベイカー』...とトホホなところが多く、一部では『B級バンド』扱いされているが、その『B級バンド』ぽさが今の時代、新鮮なんだよ!!!
R.I.Y.L. : early
THE CARS、VERUCA SALT's『Eight Arms To Hold
You』
(2000.2.21)
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OYSTERHEAD--The
Grand Pecking Order
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(国内盤 :
イーストウエスト AMCY-7301)
プライマスのレス・クレイプール、フィッシュのトレイ・アナスタシオ、そして元・ポリスのスチュワート・コープランドの3人が、自分たちのお楽しみのために組んだバンドが、このオイスターヘッド。あまりにもツアーが楽しかったのでこうしてアルバムまで作っちゃったらしい(笑)。このアルバム、まんまプライマスじゃない?(笑) レスの個性が強過ぎ(苦笑)。『脱臼ベース』とか『ドブ板ブチ抜き』などと呼ばれるパポパプけったいなベース弾きながらレスが歌えばプライマスになるんだなぁ...とミョーに感心したりして(笑)。“Birthday
Boys”をなど聴くと、トレイのギターもフィッシュっぽさを振りまいてることが解ります。一番影が薄いのはスチュワート・コープランドのドラム(笑)。自称『世界一のドラマー』も世代交代の波には勝てなかったのか? だけど、“Oz
Is Ever
Floating”なんか聴くと、やっぱりスチュワートの音だなぁ...とニヤリ。タイトル曲には“幸せなら手をたたこう”説アリ(笑)。
R.I.Y.L. :
PRIMUS, SAUSAGE, drumming of Stewart Copeland
(2001.12.18/12.19)
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